2008年05月03日

イランが米ドルでの石油取引を停止

 イランが米ドルでの石油取引を停止しました。

イラン、原油取引での米ドル決済を完全停止と 石油省


テヘラン――イランの石油省当局者は30日、原油取引での米ドル決済を全面的に停止したことを明らかにした。イランは過去1年、核開発問題やイラクへ武装勢力の干渉で厳しく対立する米国の経済制裁などを受け、リスク削減でドルへの依存を減らす方針を示していた。

国際石油市場では米ドルが基軸通貨となっているが、ドル安などを受け、原油産出国が不満を募らせている背景もある。石油省当局者は国営テレビとの会見で「原油取引でのドル決裁はすべて中止した」と指摘、輸出国の了解も得たとしている。

今後の取引は欧州では欧州連合(EU)のユーロ、アジアでは円で実施するとしている

イランは、石油輸出国機構(OPEC)で2位の産出国。同国はOPEC関連会合で、原油取引でのバスケット方式通貨を提案してきたが、支持は得られなかった経緯がある。

イラン中央銀行も米国の経済制裁をにらみ、外貨準備高をドル以外の通貨に移行する動きを強めている。

CNN


 イランはアメリカとの関係が悪化し、それに対抗すべく様々な手を打っています。そのひとつがこの米ドル取引の停止でしょう。
 その他にも、イランは上海協力機構に加入を申請したり、中国との関係強化を図っています。

イラン、上海協力機構に加盟を申請


 【モスクワ=共同】ロシア通信によると、イランのモッタキ外相は24日、中国とロシア、中央アジア諸国でつくる上海協力機構(SCO)の事務局に対し、正式加盟の申請文書を出したことを明らかにした。タジキスタンを訪問し、ラフモン大統領との会談後の記者会見で述べた。同国も正式加盟を支持したという。 (3月24日 23:49)
NIKKEI.NET


 しかし、それに対抗すべく、アメリカもイランに対する包囲網を狭めています。

(5/2)米英、イラン核問題で包囲網に中ロ巻き込みへ



 【ロンドン=岐部秀光】国際社会でウラン濃縮活動を続けるイランへの包囲網構築の動きが加速する兆しが出てきた。チベット騒乱問題に関する国際的な批判を意識し、国際協調をアピールしたい中国が対イラン制裁強化への慎重姿勢を微妙に修正、ロシアにも変化が見られるためだ。それを踏まえ、米英両国は2日、イラン問題を巡りロンドンで開く国連安全保障理事会常任理事国とドイツの6カ国外相会合で、イランへの投資抑制などを働きかける構えだ。

 英外交筋によると、チベット騒乱への対応に追われる中国は、ここにきてイラン問題で欧米と足並みをそろえる姿勢を見せ始めている。4月半ばには関係国を上海に招き同問題に関する高官協議を開いた。メドベージェフ氏が7日に大統領に就任するロシアも、イランによる核開発は望んでおらず、指導者の交代を機に、条件次第で対イラン政策を見直す可能性がある。
NIKKEI.NET


 中国とロシアの協力によってアメリカに対抗しようとしたイランですが、チベット問題で風向きの悪い中国はアメリカに譲歩しつつあります。
 これらの事態は日本にとって無関係ではありません。
 最初の記事で書かれているように、イランは「ユーロ」と「円」による取引に限定しました。つまり、日本はイランから石油を買っているのです。

<2006年の日本の国別原油輸入国>

 1.サウジアラビア:30.0%
 2.アラブ首長国連邦:25.4%
 3.イラン:11.5%
 4.カタール10.2%
 5.クェート:7.1%
 6.インドネシア:2.8%
 7.スーダン:2.6%
 8.その他:10.4%

<2006年の日本の地域別依存度>

 1.中東地域:89.1%
 2.アジア・オセアニア地域:5.2%
 3.アフリカ:4.4%
 4.その他:1.2%

※参照元:石油天然ガス・金属鉱物資源機構日本の資源事情より)


 上の図のように、日本はアメリカと仲の悪いイランから石油を買っています。イランどころか、ほとんど中東から石油を買っている訳です。何故、一時期インド洋に自衛隊が派遣されたかというと、中東から日本まで航海する石油タンカーを警備して貰うためです。(他の国に警備して貰う代わりに、自衛隊が補給作業を行っていました。日本の自衛隊は自分の国の石油タンカーを「危険だから」という理由で守りません。その補給作業ですら、自衛隊を海外に派遣するのはダメだ、と色んな人に反対されました。まあ、イラクに行くアメリカの船にも給油してしまったので、間接的にイラク戦争を手伝ったと言うことで戦争反対の日本としては色々とまずかったのです。ですが、自衛隊派遣をしなければ日本の石油タンカーは守って貰えなかったでしょう)

 中東情勢はそのまま日本の原油価格に直結します。つまり、ガソリン代の値上がりなどに影響する訳です。
 いちいちドルに両替せずに円で石油を買えるのはありがたいことですが、これでもしイランとアメリカの仲がこじれてイランからアメリカよりの日本が石油を買えなくなるとまた原油価格があがる可能性が出てきます。
 このニュースだけではまだ直接影響は出ないでしょうが、これから先、原油価格が更に上がる可能性があるということです。

 また、アラブ諸国はEUの「ユーロ」のように貨幣統合を画策しています。

湾岸協力会議、通貨統合に向けた取り組み推進で合意


 [ドーハ 6日 ロイター] ペルシャ湾岸諸国は6日、2010年までに単一通貨を発行することに向けて、取り組みを推進していくことで合意した。また、インフレに対抗するため、通貨見直しやドルペッグ制の一方的な解消を求める圧力に対して、抵抗することでも合意した。

 湾岸協力会議(GCC)加盟国の中銀総裁は6日、年に2回の定期会合を開催。GCCのアブトルラハマン・アティヤ事務局長は会議後に、「2010年に向け、単一通貨に関連する法案や問題を完了させるため」GCC加盟国の中銀総裁が2カ月後に再び会合を開く予定を明らかにした。

 GCCはサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、オマーン、バーレーンで構成されるが、オマーンは06年に2010年1月1日を期限とする計画への参加取りやめを表明、クウェートは07年5月にドルペッグ制を解消している。

 カタール中央銀行のシェイク・アブドラ総裁は記者団に「09年に期限を見直す」と語ったが、目標の2010年について「現実的なもの。この目標に向けてコミットしていく」と述べた。

 昨年の声明によると、通貨統合計画は数年ずれ込むとの見方が示されていた。

ロイター通信


 ドルの下落により、アラブではインフレが起きているそうです。おかげでドルに石油価格を連動するのをやめるべきだという動きもあり、そうなるとますますドルの価値が下がることになります。実際に、クウェートはドル連動(ドルペック)を辞めたそうです。
 この流れでアラブの統合通貨が出来て、ドルに頼らないアラブの強固な協力体制が出来れば、アラブもEUのように色々と経済的な問題を解決出来る可能性があります。
 とはいえ、上記のように時期尚早という声もあり、なかなかまとまり切れていないようです。
 ドルが価値を落とす中、ロシアは自国の「ルーブル」を基軸通貨にすると宣言しています。宣言を行ったのはメージェフ新大統領ですが、恐らく指示しているのは間違いなくプーチン前大統領でしょう。
 こうなると、ドル/EU/ルーブル/アラブ統合通貨、と言うように色んな貨幣が群雄割拠することになりそうです。
 そうなると、アジアがどうなるのかが問題です。このまま行けば、一番信頼のある貨幣として円の責任がますます出てきそうです。
 そうなると、ますます円高は進むでしょう。そうなった時に日本は耐えられるのか。
 あるいは、耐えられるように今から対策を行っておくべきでしょう。



 久しぶりに聖火リレー以外を扱いましたが、どうだったでしょうか。また色々と扱いたいと思います。


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Posted by 哲学 at 17:24│Comments(0)ニュース
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