2008年04月18日

聖火リレーの動勢

 昨日はインドのニューデリーで聖火リレーが行われましたが、警官を大量に動員した厳戒態勢の中で行われました。

インド、対中関係に配慮 聖火リレーで1万5000人警戒


 【バンコク=大場司】北京五輪の聖火リレーが十七日、世界最多の約十万人の亡命チベット人が暮らすインドの首都ニューデリー中心部で行われた。インド政府は、チベット問題が近年良好な対中国関係に影響しないよう配慮。亡命チベット人による抗議行動は約一万五千人の治安要員に阻まれ、リレー自体は混乱なく終わった。

 現地からの報道によると、聖火リレーは当初の約九キロのコースを大幅に短縮して実施。インドの著名スポーツ選手らが、大統領官邸前から観光名所のインド門までの約二・三キロの直線道路を走った。

 インド五輪協会はリレーの開始時間を事前に公表せず、コース周辺の道路は数時間前から完全封鎖された。コースから離れた地点で約五千人の亡命チベット人が「自由のたいまつ」を運ぶ抗議デモを展開したが、厳重警備の警察官にコースへの接近を阻止され、AFP通信によると百八十人が拘束された。

 インド政府は一九五九年からチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ十四世を「客人」として受け入れ、亡命政府に拠点を与えている。だが、「チベットは中国の一部」との立場を堅持、国内でのチベット人による反中国活動を認めていない。

 インドと中国は六二年の国境紛争以来、領土問題をめぐって対立が続いているが、八〇年代後半以降は、首脳が相互訪問を行うなど外交、経済面で戦略的な協力関係の構築が進んでいる。今回のチベット騒乱でも、インドは中国に対し、対話による解決の模索を要請する一方、アンサリ副大統領がダライ・ラマ十四世との会談を急きょ中止するなど、一定の配慮を示している。
http://www.chunichi.co.jp/article/world/news/CK2008041802004461.html?ref=rank
中日新聞


 インドにはチベットの亡命政府があり、大量のチベット人が住んでいます。当然、チベット人の中でも過激派がなんらかの行動を起こすのではないか、と言われましたが、結局関係ない場所を自分たちで作った「自由のたいまつ」を運ぶデモ行進に留まりました。
 インドと中国は上記のように、昔から領土問題などで対立していましたが、外交的にはどちらかというと近年友好的な関係を構築しようと努力を努めています。
 もっとも、チベット人の最高指導者であるダライ・ラマ14世は「チベットの独立」などは一切掲げておらず、人権侵害を止めてくれ、と言っているだけです。なので、インド政府もチベット亡命政府を客人として扱いつつも、チベットが独立するのを要請している訳では決してありません。とはいえ、中国からすればチベット亡命政府を抱え込んでいる、というだけで目の敵にしてもおかしくない状況です。
 しかしながら、中国はインドの常任理事国入りは認めており、政治的には関係は良好と言えるでしょう。(産経ニュースより)

 さて、インドはこのように中国に対して配慮を見せていましたが、今まで中国に対して配慮を見せていた日本国内では反対の動きを見せています。

 まず、野党である民主党の幹事長小沢氏がチベット問題についてこのように語ったそうです。

チベット問題で小沢氏「中国が変化を」


 民主党の小沢一郎代表は17日、北海道釧路市内で講演し、チベット問題に関して、「中国の政権が抱えている矛盾が民族問題を契機に持ち上がってきた。共産主義独裁の政権と、経済や政治の自由(の両立)は原理からして成り立たないと指摘。「中国の指導者にも言っているが、本当に中国共産党政権が生き延びようとするなら、時代の変化に応じて自分自身が変化しなければならない」と述べ、中国指導部は体制変革を模索していくべきだとの持論を展開した。

 また、小沢氏は北朝鮮による日本人拉致問題に関し「いくら(日本が)北朝鮮に言っても解決しない。中国は朝鮮半島の現状維持を国策にしており、金正日政権を変えようという気はない」と強調。さらに「米国経済の後退と同時に、中国経済がおかしくなるのではないかといわれている。中国の政治経済的混乱は政治的動乱につながり、朝鮮半島の動乱につながる」との見方を示した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080417-00000964-san-pol
Yahoo!ニュース


 小沢氏はチベット問題は中国の根本的に抱える問題が分かりやすい形で噴出したものであり、今の独裁政権を代えようとしない限り、国として立ち行かなくなると指摘しています。小沢氏は現在の中国の状況は不健全であると断罪し、独立体制の解体と政治の開放を望んでいるようです。これは他の日本の政治家には中々言えない正論と言えるでしょう。もっとも、彼自身は日本という国を直接背負わない野党にいるのだから、自由な発言が取れている訳ですが。
 さて、野党に対抗したのかどうかは知りませんが、与党の側でもチベット問題に対してやっとはっきりとした声明を出しました。

真保守研 中国政府に「人権弾圧を即刻停止せよ」 福田首相にも「毅然と」


 自民党の派閥横断型勉強会「真・保守政策研究会」(会長・中川昭一元政調会長)は17日、国会内で会合を開き、中国政府に対して(1)チベットでの人権弾圧の即時停止(2)メディアの自由な現地取材(3)ダライ・ラマ14世との対話-を求める決議を採択した

 また、福田康夫首相に対して、5月に来日する中国の胡錦濤国家主席の首脳会談で、ギョーザ中毒事件、東シナ海の石油ガス田問題などへの懸念や憂慮を正確に伝えることを要望。「毅然(きぜん)たる姿勢で日中間の懸案打開に向け、中国の対応を求めるべきだ」とした。

 決議では「中国政府は北京五輪の誘致に当たり人権状況の改善を世界に公約したが、公約履行への誠意ある姿勢は見えず、人権状況は悪化の一途にある」と指摘。加えて中国の軍事力増強についても「平和な社会の確立とは無縁であり、重大な憂慮の念を抱く」と批判した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080417/stt0804172306008-n1.htm
産経ニュース


 チベット問題に対し、中国の顔色をうかがうのではなく、真っ向から意見を言う立場を取ったようです。聖徳太子の頃から、日本は「日出づる処の天子より、日没する処の天子へ書を送る」と言っていたように中国と対等の立場を堅持してきました。足利義満の時代に一時朝貢貿易がなされましたが、結局それ以後も形式としては対等な立場を取ってきました。それならば、日本もこのように毅然たる態度で中国に向き合うべきでしょう。
 この声明の裏には、数日前に産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員の古森義久氏を呼んだことも一つの要因となっているでしょう。
 古森氏は真・保守政策研究会において、アメリカではどのように中国に向き合っているかについて講演したそうです。詳しい内容については、古森氏のブログの『保守とはなにか――「真・保守政策研究会」に招かれて』にて書かれているので、興味ある方はご参照ください。かいつまんで書けば、「米国の対中姿勢が対日姿勢に及ぼす影響が大きくなってきている」と言うことであり、「つまり中国の軍拡を警戒することから日米同盟の重要性が再認識されてきた」と言うように、日米同盟をこれからも強化していくためにもアメリカの国会を参考にして、考えていくべきだと言うことです。
 しかし、この講演が一つの要因とするならば、いつも通り「対米従属」政策の結果出てきた声明とも取れます。が、実際にはアメリカの議会ではチベット問題に対して非難決議は出しているものの、ブッシュ大統領など政府はどちらかと言えば中国の立場を尊重し、ボイコットなどを辞めるように世界に勧めています。
 それなのに、この決議を「真・保守政策研究会」が出てきたのは、古森氏の講演で最も強調されていたという「自国の利益を守ると言うことは他の国では『保守』ですらなく、守って当たり前の行為」というところから来ているのかもしれません。

 さて、政府はこのように中国に対して真っ向から意見を出しましたが、民間の方でも、聖火リレーに対して「ボイコット」する動きがありました。
 まずは、スタート地点である善光寺がリレーの境内使用をボイコットしました。

善光寺 リレーの境内使用反対


今月26日に長野市で行われる北京オリンピックの聖火リレーで、スタート地点となっている善光寺は、世界各地の聖火リレーで中国政府への抗議活動が続いていることから、善光寺の境内をスタート地点にしないよう長野市に求める方針を固めました。

北京オリンピックの聖火リレーは、日本では今月26日に長野市で行われ、善光寺境内の本堂の前をスタートして、80人のランナーが市内中心部の18.5キロのコースを聖火をつないで走ることになっています。スタート地点となっている善光寺では、世界各地の聖火リレーでチベット問題での中国政府の対応を批判する抗議行動が続いたことから、境内がスタート地点となることに反対する意見が出始めたため17日、幹部会を開いて対応を協議しました。関係者によりますと、協議の結果、善光寺の境内をスタート地点にしないよう長野市の聖火リレー実行委員会に求める方針を固めました。長野市の実行委員会では、善光寺側の意向を確かめたうえで、スタート地点を境内の外に移すことや出発式などのセレモニーを縮小することなどを検討することにしています。


 このように、正式な決定ではありませんが、善光寺がスタート地点変えて欲しいと長野市に要望したのは確かなようです。まだ長野市がこれを受理すると決まった訳ではありませんが、長野リレーはまた厳しいことになるでしょう。
 このことについて、ネット上では肯定的な意見が多く、痛いニュースなどでそれが見ることが出来ます。
 そして、善光寺だけでなく、スポンサー達も長野の聖火リレーを辞退する動きを見せました。

長野の聖火リレー、スポンサー企業が広告車参加を辞退


 長野市の聖火リレー実行委員会は17日、長野市で26日に行われる北京五輪の聖火リレーで、スポンサーの日本コカ・コーラとレノボ・ジャパンが、自社企業の広告を付けた車両の、リレー車列への参加を辞退していたことを明らかにした。

 実行委によると、同じくスポンサーのサムスンは当初から参加を見合わす方針で、スポンサーによる広告車は、一台も出ないことになる。

 リレー実行委などによると、辞退が正式に決まったのは約2週間前で、レノボは広告車両の規格などが合わなかったことが主な理由としている。聖火リレーは、チベット問題をめぐる中国の人権問題への抗議対象となり、各地で混乱が続いている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080417-00000073-yom-soci
Yahoo!ニュース


 レノボは中国のパソコンメーカーで、サムスンは韓国の企業です。コカ・コーラはアメリカ資本ですね。
 それぞれ日本支部とはいえ、中国の企業までが聖火リレーの広告車を辞退するというのは異例の事態と言えるでしょう。
 結果として長野の聖火リレーではスポンサーの車が一台も出ないことになります。
 政府からも、民間からも嫌われ、果たして長野の聖火リレーはどうなるのか、暗雲が立ちこめるばかりです。


今後の聖火リレーのルート
4/19 バンコク(タイ:首都)
4/21 クアラルンプール(マレーシア:首都)
4/22 ジャカルタ(インドネシア:首都)
4/24 キャンベラ(オーストラリア:首都)
4/26 長野(日本)
4/27 ソウル(大韓民国:首都)
4/28 平壌(北朝鮮民主主義人民共和国:首都)
4/29 ホーチミン(ベトナム)
5/02 香港(中華人民共和国)
5/03 マカオ(中華人民共和国)
5/4-5/6 海南省(中華人民共和国)
5/7-5/10 広東省(中華人民共和国)
5/11-5/13 福建省(中華人民共和国)
5/14-5/16 江西省(中華人民共和国)
5/17-5/19 浙江省(中華人民共和国)
5/20-5/21 上海(中華人民共和国)
5/22-5/24 江蘇省(中華人民共和国)
5/26-5/28 安徽省(中華人民共和国)
5/29-5/31 湖北省(中華人民共和国)
6/1-6/3 湖南省(中華人民共和国)
6/4-6/6 広西チワン族自治区(中華人民共和国)
6/7-6/9 雲南省(中華人民共和国)
6/10-6/12 貴州省(中華人民共和国)
6/13-6/14 重慶(中華人民共和国)
6/15-6/18 四川省(中華人民共和国)
6/19 エベレスト山頂(チベット)
6/21 ラサ(チベット)

6/22-6/24 青海省(中華人民共和国)
6/25-6/27 新疆ウイグル自治区
6/28-6/30 甘粛省(中華人民共和国)
7/2-7/4 寧夏回族自治区(中華人民共和国)
7/5-7/7 陝西省(中華人民共和国)
7/8-7/10 山西省(中華人民共和国)
7/11-7/13 内モンゴル自治区(中華人民共和国)
7/14-7/16 黒竜江省(中華人民共和国)
7/17-7/19 吉林省(中華人民共和国)
7/20-7/22 遼寧省(中華人民共和国)
7/23-7/26 山東省(中華人民共和国)
7/28-7/31 河南省(中華人民共和国)
8/1-8/3 河北省(中華人民共和国)
8/4-8/5 天津(中華人民共和国)
8/6-8/8 北京(中華人民共和国)



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