2008年04月04日

新悪法『ネット規制法案』

 これまでも酷い法律が国会に提出されてきましたが、新たに酷い法案が国会に提出されることになりそうです。
 法案の提出者は自民党の高市早苗議員です。
 情報ソースはネットワークの自由を守る運動をしている「インターネット先進ユーザーの会『MIAU』」の幹事であるハンドルネーム「未識 魚」さんの「osakana.factory」から。
 長いので色々と抜粋していきます。元記事は「日本の子供達からインターネットが消える日」です。

 18歳未満の人たちがインターネット上の「有害情報」に触れないようにする対策を講じる法律案ってのが、3月の中頃から末頃にかけて、姿を現してきた。(中略)この法律案、ものすごくヤバい。
(中略)

まず状況を整理しよう。本当は全部丸ごとコピペしたいところなんだが、そいつはもうちょっと待ってほしいので、とりあえず俺の要約と説明で耐えてくれ。

1. 自民党の高市早苗議員が、『青少年の健全な育成のためのインターネットによる青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案』という法案を詰めていて、これはかなり完成形になっている。池田信夫氏によれば、ブレーンとして警察官僚がついて条文を固めたらしいし、確かに法案の中にはそれをうかがわせる傍証もある(12条のネットカフェ規制とか)。
2. 一方民主党の高井美穂議員を事務局等とするプロジェクトチームは、『子供が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律案』というのを取りまとめている(ちなみに先の高市議員と高井議員は、国会議員の電話番号なんかが載っている「国会議員要覧」で見ると、仲良くお隣同士だ)。
3. これらの法案の目的は、「性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼす」とか「著しい心理的外相を与える恐れがある」とかそういうインターネット上の「有害」な情報について、青少年が見られなくなるよう全部フィルタリングすること
4. これらの法案が、今期国会の混乱のドサクサに紛れて提出され、あっさり自民党案が通っちゃい兼ねない空気になっている(と自民党議員は言っている)。


『日本の子供達からインターネットが消える日』より


 つまりは、混乱している国会のどさくさに紛れて子供達から有害情報を一切閲覧できないようなフィルタを作るように義務づける法律を自民党の高市早苗議員が通そうとしているそうです。
 これだけを見ればいいことに聞こえなくもないですが、その具体的な内容を見ていくととても酷い内容です。


 で、これらの法案の何がヤバくてムカつくのかという具体的な中身についてだが、民主党法案はかなりラフな体裁になっているのと、内容自体は不思議なくらいに自民党案とソックリなので、完成形が見えている自民党案に基づいて話しておこう。

1. 内閣府に設置される少人数の青少年健全育成推進委員会最大数5人)っていう組織が、インターネット上の全てのコンテンツについて、青少年に有害か無害かについての判断基準を作成します。ちなみにその基準へ異論を申し立てる方法はありません。(法案19条から31条)
2. 個人も含む全てのウェブサイトの管理者は、上記の有害コンテンツの基準に合致した場合、サイトを丸ごと未成年が入れない会員制にするか、フィルタリングソフトへ自らのサイトをフィルタ対象として申請することなどが、求められます。(3条1項)
3. 全てのISP、ASP事業者などには、有害コンテンツの削除やサービスの停止が求められ、従わない場合の罰則も設けられます。結果としてウェブコンテンツの削除は行われることになります。(3条)
4. 全てのPC・携帯電話について、国の基準に基づいたフィルタリングソフトウェアをプレインストール、あるいは、フィルタリングサービスに強制加入することが、PCメーカー(努力義務)及びキャリア(提供義務)に求められます。(5条、8条)


 えー、見れば問題点は一目瞭然ですね。
 国内には何百というインターネットプロバイダーがあり、それらのプロバイダーには何千何万という会員のウェブページが存在し、それらをたった五人の人間の価値観によって正しいかどうかを断罪していくそうです。一番目からもうふざけるな、て話ですね。
 しかも、その判断に対して反論することは不可能。むこうが「有害」と決めつけたらあくまで有害で、言い訳も異議申し立ても出来ず、ただ従うことしか出来ないそうです。たった五人しかいない人間の価値観で日本の全ての倫理観を決定され、間違っているかどうかの第三者の判断を仰ぐことも不可能な訳です。
 第二に、これは法人・個人の関係なく、この青少年健全育成推進委員会に吊し上げられたら反論を許されず即刻未成年が見れないように処置を行わなければならないこと。それが出来ないなら罰則があり、最終的にはウェブコンテンツの削除をされてしまうということ。
 例えば、こんな事がこんな可能性があります。

あるブログの書き込み>「○○ちゃんかわいいなぁ」
青少年育成推進委員会「あなたのその書き込みは青少年に有害なので18禁にします。フィルタを入れるか会員制にしてください」
ブログ管理者「え?ただ単にセクシー系アイドルの感想言っただけじゃないですか」
青少年育成推進委員会「反論は許しません」
ブログ管理者「でも、他にも似たようなことしてる人沢山いるじゃないですか」
青少年育成推進委員会「その人達もいずれ指定します。まずはあなたのサイトを指定します」
ブログ管理者「たった五人しかいない癖に無茶言うなよ!!」
青少年育成推進委員会「仕方ないですね。あなたのサイトはプロバイダーに言って閉鎖してもらいます」
ブログ管理者「うっせー!ここは俺が運営しているサーバーだ!関係ネェよ!」
青少年育成推進委員会「では、仕方ないので懲役××年の罰則を適用します」
ブログ管理者「横暴だ!!!」


 ということになる可能性もある訳です。


 俺なりに問題点を3つくらいに整理すると、

1. 表現の自由の問題

自治体レベルならいざ知らず、内閣府で委員会を設けて基準を示す上、間接的とは言え削除が行われるのは、検閲だろう!

……と叫びたくなるわけだが、だがしかし高市議員が老獪なのは、ちゃんと逃げ道を用意しているところ。それはつまり、内閣府の委員会自体は、単に基準を示しているだけで、実際のコンテンツの削除やらサービス停止やらフィルタアウトやらを行うのは、民間の事業者だっていう構図だ。で、コンテンツを封じたのは民間の事業者なので、文句はそっちへ言ってね、そのために調停機関は作るから、となっている。国は直接手を下してない、だから検閲ではない、どうだ文句あるか、という筋道。池田氏はこの調停機関の存在を評価されてるけど、俺は全然評価できないな。

2. 実効性や技術上の問題

例えば、性的・暴力的な言葉があるという理由でWikipedia全体をフィルタするのって、本当に青少年の利益になっているのかね?という疑問は当然沸き起こるわけだけど、これにも反論は用意されている。「青少年の健全な育成のために、多少の弊害は止むを得ない」。だから多少ってどこまでなんだよ。

あるいは、PCメーカや携帯キャリアのコスト上昇分に見合うだけの効果、「青少年を守る」という社会的な利益が得られるのかどうかの検証を経たのか、というような、極めて合理的な反論もありえるだろう。ところがだ、これも反論はあるんだな。「コスト云々と称して健全育成のための努力をしないことは社会的・倫理的に許されない」。

また、LinuxのようなオープンなOSを用いたPCが作れなくなるんじゃないかとか、個人のウェブサイトを封じるような行為は、日本からのイノベーションや、自由な情報発信を殺すんじゃないか、というような、疑問もありえるだろう。でも、反論はきっとこんな感じ。「Linux? ナニソレ?まあ、作りたいなら法律守ってがんばれば?」

3. 教育など他の面からの視点が無い

実はこの法案には、「インターネットの適切な利用に関する教育の推進等」という条文があるんだが(15条~18条)、そこで述べられている教育ってのは、「ガキにフィルタリングソフトウェアを使わせるために、学校とか自治体とか国とかはいっぱい努力しろ」という、とても清清しい内容である。違うだろ!フィルタリングソフトウェアを使わなくても問題なく情報社会で生きていけるような技術なり、倫理なりを身に着けること、そういう教育へ注力する方がずっと大事だろうが! そんな教育のメソッドが無いっていうなら、それこそ国がカネを出して確立するべきところだろう。

 つまり、この法案で何がしたいのかというと、

* 18歳未満には国によってコントロールされた情報しか見せない
* 日本でインターネットに関係する全ての人間は、そのための犠牲を払え

 ってこと。これじゃあ、中国のグレートファイアーウォールを嘲笑できませんよ。この法案が成立した暁には、日本の18歳未満がつなぐ「ソレ」は、もう“the Internet”じゃない。
(後略)

『日本の子供達からインターネットが消える日』より


 んなことしたって海外サイトは止められません。例えば、インターネット掲示板の2チャンネルはサーバーが海外にあるので多分規制出来ません。2チャンネルがあれだけ叩かれてて何故閉鎖しないのかというと単純に日本の法律が適用されない法規制のゆるい国にサーバーを置いているからです。
 そして、残された日本の個人が運営しているブログやホームページがこの五人の人達によって好き勝手に吊し上げられることになるのです。18歳未満に対してだけとはいえ、立派な治安維持法です。言論弾圧です。
 それこそ、「今の政治は腐っている」と書いたホームページが「青少年に有害なので18歳未満は見れないようにしてください」と言われる可能性だってある訳です。そんなことしてなんになるんですか。
 人権擁護法案も酷いものでしたが、これもまた酷い法律です。
 詳しい条文の一部は池田信夫氏のブログで書かれています。詳しく知りたい方はこちらも参照するといいでしょう。
 こんな法案が通らないように抗議の署名などを求められた時は積極的に参加して貰いたいと思います。


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Posted by 哲学 at 14:57│Comments(1)ニュース
この記事へのコメント
ども、はじめまして。手裏剣税理士と申します。

うーむ、世も末ですな。

自由な言論というのもまあ行きすぎはありますが、混沌としたものの中にこそひっそりと真実が存在することのできる場所があるのであって、何から何まで管理して管理者の価値観にあわないものは規制し除外していくといったやり方は間違っています。(2ch規制、インターネット規制など)

規制すれば良い、という論者は、規制する側を神様か聖人君子のように考えて盲信しているので、そのへん考えを改めるべきですね。

規制されたい方は勝手に賛同して規制されればよろしいかと思いますが、規制されたくない我々まで巻き込んで欲しくない、というのが正直なところです。
Posted by 手裏剣税理士手裏剣税理士 at 2008年04月04日 15:58
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